「画像からくり」第43回「折り絵合わせパズル」と「ミウラ折り」(日本写真学会誌 第81巻第4号から)

2018/12/21
カテゴリー
タグ

紙は切り, また折ることができる.これがディスプレイには無い特徴であるので, 紙を折る仕掛け絵本を以前この連載で取り上げた1). 紙を折った商品やパンフレットが長年気になっているので, 今回の紹介にあたり, すぐ必要なだけ並べることができた. 今回は, 紙を切り, 折り曲げて作るパズルと,「ミウラ折り」を用いた商品を取り上げる.

日本写真学会誌 第81巻第4号(2018年11月)に掲載。
著者:桑山哲郎


Fig. 1 折り絵の商品とパズル

  Fig.1 をご覧いただきたい.ここに並んでいるのはコレクションの1/5程度であるが,今回の紹介には十分な数と種類が揃っている.折り重なっていて少し見分け難いが,左上から蛇腹式の仕掛け絵本,ミウラ折りを用いた防災マップ,地域案内,科学館の案内パンフレットを並べている.手前の左はミウラ折りを用いた記念品,そして自作した折り絵合わせパズルの原紙と折り畳んだ結果を並べている.


Fig. 2 蛇腹式の仕掛け絵本2)

 Fig. 2 は,蛇腹式の仕掛け絵本を開いた様子である.1枚の紙を等間隔の折り目で折り曲げ,右向きの面と左向けの面に別な絵を描くと,元は1枚の紙なのに,2つの画像を表示することができる.この仕掛けは「バイ・シネオラマ(Bi-Cineorama)」と呼ばれ2),1610年頃まで遡ることができる手法である.1992年に駒形克己氏の絵で出版された「WALK & LOOK(あっちとこっち)」というタイトルの絵本3)では,外箱の中に4冊の絵本がセットになっている.写真はその1冊.“MORNING & NIGHT”で,左45度方向から見るとニワトリの横顔,右45度方向から見るとフクロウの横顔が見える.鮮やかな色彩で2つの像の入れ替わりが楽しめる,魅力的な絵本である.現在でも入手は可である.2方向から観賞する絵本の原図は,2枚の同じ寸法の画像を短冊に切り出し並べるだけなので,簡単に自作できる.ネット上で自作したレポートは少し見つかるがもっと盛んになって欲しい手法である.


Fig. 3 折り絵合わせパズルを自作した様子

 カタカナの「ロ」の形に切り出した紙の裏表を用い,紙を折り曲げて遊ぶパズルは古くから知られていると思うが,どの国のどんな時代から始まったのか,私自身は解明できていない,Fig. 3 は,自作した例である.印刷したパンフレットとして配布するときには両面印刷するのだが,ネット上の自作例では表側と裏側を左右に並べてプリントし,折り曲げて両面印刷の代用としている.表裏合計して24枚の領域から6種類の完成した図柄を作り出すパズルである.ネット上では「折り絵合わせパズル」の外に,「数字合わせパズル」,「色合わせパズル」という呼び名で見つけることができる.ただし厳密には,絵合わせの場合だけ少し難しくなる.Fig. 3の完成例に見えるように,数字あるいは色が4つ揃っていても,一つの絵として完成しない場合もある.


Fig. 4 折り絵合わせパズルの原紙

 Fig. 4は折り絵の原画である.ホームページ掲載時には,十分な解像力のカラーの原画を掲載する.この図は,通常のワープロソフトで容易に描くことができる.また正方形という制約は無いので,今回は少し縦長の長方形としている.パズルを完成させる手順としては番号1が最も容易で,2と3がこれに次ぐ.番号6まですべて完成させるには多少努力が必要で,十分楽しめる.


Fig. 5 科学館の案内パンフレット

 紙を折って作り出される仕掛けでは,意外性を楽しむことができる. Fig. 5は, 名古屋の「でんきの科学館」が2009年4月から2010年3月まで使用していた展示物の案内パンフレットである. 3つ折りになった厚紙を開くと, 館内案内が広がるので来場した子供には好評と思われる.


Fig. 6 ミウラ折りによる記念品

 折った紙は立体的な造形としても魅力的な場合がある.Fig. 1 左下は北海道大学が150周年をして制作した記念物である.大学の校章と大学の春夏秋冬を表しているマークが,銀色の背景に,折り込んだ紙の各面に配置され,デスクトップ・アクセサリとして楽しめる記念品になっている.Fig. 6はその裏面である.1枚の紙を「ミウラ折り」の手法で折り畳んでいるのだが,形と陰影が不思議な見え方をする.なお,一つ一つの面が平行4辺形でも,長方形でも原理は同じミウラ折りである.


Fig. 7 2種類のミウラ折りによる案内地図

 最近,駅や市役所・区役所など公共の場所で配布されている地図に,ミウラ折りを用いたものが大変増えている.何種類も揃えてもあまり意味が無いので,ごく最近の2点を紹介する.Fig. 7 で広げているのは「港区高輪地区防災マップ」で,2017年3月発行となっている.「公式ミウラ折りサイト」には,表と裏に表紙となる厚紙をした,配した定型的な地図寸法が掲載されている.写真の地図はA2サイズで,上下574 mm を8つに折り,左右430 mm を5つに折っている.また「神楽坂」の地図は一つ上の寸法,ほぼB2サイズである.これらの出版物には特許番号が記入されているので,分権的に調査を行ってみた.特許としては発明者である三浦公亮 東京大学名誉教授が発明者の実用新案「折り込み地図」4)が1975年9月7日出願,1981年6月12日公告となっている.もう権利期間は終了している.またミウラ折りの出版物に記載されている特許番号を調べると,これは紙を折る機械に関する特許5)であった.実際のビジネスの現状と対応していて興味深い.
 今回取り上げた紙を折る商品は,多様な商品のごく一部で,写真や絵合わせに関連する魅力的な商品を今後も紹介したい.


文献:
1)桑山哲郎,口絵連載 画像からくり第36回「江戸の遊び絵の伝統」,日本写真学会誌,第80巻1号(2017).
2)Larry Evans, “3-Dimensional Optical Illusions to color & construct ”, Troubador Press, San Francisco, USA (1977).
3)駒形克己,「リトル・アイ シリーズ ⑨WALK & LOOK あっちとこっち」, (株)偕成社(1992).
4)三浦公亮,「折り込み地図」,実用新案出願公告 昭56-25023,1975年9月7日出願,1977年3月16日公開,1981年6月12日公告.
5)渕上惣エ門,中山英樹, 「薄板状材料折り装置と薄板状材料折り方法と薄板状材料折り冶具」,特許第3694495号,2003年3月3日出願,2004年9月24日公開,2005年2月10日登録.